ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

体質

「皆よく食べるんだな」 「私は苦手なんですが…」 今までのことを考えてもシャトが特別少食な様には思えないが、山になった皿の上の料理はいっこうに減っていかない。 「全く、皆には困ったね。シャト、無理せず他に回しなさい」 みかねたグドラマが周りを窘めると…

パートナー

「なにそれ、どうゆう事?」 「そのままだよ?」 「いや、パートナーにかんしては知らないけど、竜は普通人の元で生まれないだろ…?」 「この子、何があったんだか分からないけど卵が森の中に落ちてたんだって。それでシャトさんが他の子達に手伝ってもらいながら孵…

「シャト久しぶり!」 「皆会いたがってるから行ってやってよ」 「シャトねーさん、グルシャも会いたがってます」 「みんな食事まだだろ? 今用意してるから少し待っててな」 「誰だよ共にする相手連れて来たなんて言ったの?」 「馬鹿、本人前にして言うんじゃねぇよ」 …

傭兵団の陣

『シャトねーさん』と駆け寄ってきた子供を見て、シアンは改めて首を傾げた。 顔立ちはキリオとよく似てはいるが、近づくと別人なのが判る。 シャトはその子供を相手に微笑むと 「少し背が伸びた?」 と声をかける。 「少しだけ。でもキリオも伸びててやっぱり…

お知らせ

体調不良の為今日はお休みします。 以前描いたジェナさんをどうぞ…。

傭兵団の陣へ

安全を優先するなら街道沿いに進むべきなのだが、シャトは迷わず森に分け入った。 この辺りでも、しばらく雨は降っていないようで、道とは言えない足元も荒れてはいるが歩き辛いとゆうほどではなく、特にシャトの後を追って行くと比較的歩き易い場所を選んで…

寄り道

マチルダ達と分かれた辺りから道なりに南東に進むと辺りはずいぶんとなだらかな地形になり、村や街も道沿いに半日のんびり歩けば見えてくる、とゆう位に増えて荷馬車や旅人とすれ違う事もある。 ただ山や森に近く、少し街道から外れれば人との交流を避けるよ…

文字のお勉強

(ノクイアケスにおける文字はアルファベットがメイン…だと思われます) 休憩中のこと、シアンは足元に落ちていた硬そうな枝に目を止めた。 地面を足で均し、拾った枝でそこに何やらがりがりと書いている。 「カティーナ、ちょっと」 「なんですか?」 「これは読…

内緒話

村を抜けた一行は分かれ道にさしかかると足を止めた。 北東へと向かう道は大きな岩を避けるように南に伸びていることに加え、あまり人の行き来が無いのか道幅も狭く、太い街道にそって北に向かうと見落とすとシャトが言っていたのがよくわかる。 「私等は南だ…

「ルスタ・オリウムってどんなとこ?」 「私達が住んでいるのはルスタ・オリウムの中でもイラミジャと呼ばれる街です。国の中心のようなところで、穏やかですが賑わいのある街です」 「あぁ、そっか、ルスタ・オリウムってただの街じゃないんだっけ」 この大陸の中…

騎士

朝食の片付けが終わり、それぞれが幕を外し始めたところでシャトが戻ってきた。 シアンはシャトの周辺を窺ったがオーリスの姿はなく、カティーナに視線を向ける。 「お帰りなさい」 カティーナは特に何を気にする様子もなくシャトと挨拶を交わし、幕をくるくる…

シャト再び

夜の見張りを決める事になったが、魔獣も盗賊の類もそう出ない場所で、周りに簡単な結界の代わりになる紐を張った事もあり、一人ずつでも問題はないだろう、とシアン、マチルダ、カティーナの三人が火の番を兼ねて順に見張りにつくことになった。 シアンがあ…

その夜

マチルダとアーキヴァンはルスタ・オリウム、大陸の中央部の一角、北方の山を背に大きな湖を望む"国"の生まれだとゆう。 ルスタ・オリウムは護りと赦しを軸とする宗教国だが、シアンはそれを知らないのか、それとも知っていて口にしないのか、当たり障りのな…

五人

「昔から知ってるの?」 森の中を歩きながら、シアンは肩越しにアウェイクの方へと顔を向ける。 「家としては長く出入りしています。アルナさん達とは時々行ったり来たりして…町に出るついでに買い物を頼まれたりとか、そんな感じです」 『ふーん』と相槌を打っ…

見送り

「そぅ…寂しくなるわね。あの子達には?」 「まだ話してません」 「クルルルッ」 「はい」 レノとアルナ、そしてシャトの三人は、家に戻り、遠くから響く賑やかな声を聞きながら静かに食事をしていた。 「まだまだ自分は若いつもりでいたけど、そんなことないわね。あ…

祭壇のてっぺんに飾られた石を通して辺りを照らす朝日を浴びて踊る娘達は、それぞれ白い布とともに響石の放つ光と揃いの紗を手にしている。 「…きれい」 それぞれの精霊を表す鮮やかな色彩にシアンが声をもらすと、それに気づいたのか、ジェナとシャールがウイ…

闇の日の祭

夜明けはまだ遠く、黒い空には星が輝いている。 広場の中央に飾られた祭壇の輪郭を星明かりが淡く浮かび上がらせ、それを囲むように黒い影がいくつも並んでいるが、どうやら村の男達が祭壇に背を向けるようにして何かを手に座っているらしい。 澄んだ鐘の音…

祭の前夜

アルナはクラーナから届いたのだとゆう野菜を使ってシアン達の分まで夕食を用意していた。 所々に魚や小さな蟹が見えるのが、川に囲まれた村らしい。 シャトは未だ魔獣の元にいるらしく戻っていなかったが、アルナは"シャトの分はとってあるから気にしなくて…

「…大丈夫でしょう」 ジェナはそれがシャトの事だと分かっているのかいないのか、ため息混じりに答えると、再び顔を仰向けて濡れた布を被った。 「シャトが傭兵団に行く前にね、言ってたの。傷付くのなんか見たくないって」 シャールがジェナに投げ掛けると、少…

本心

体力的な疲れでも魔力切れでも無く、ジェナとシャールはただた精神的に疲れているらしい。 魔獣の血で汚れた服を川に晒し、頭から川の水を被るとそれぞれ口を開くことなく湯に浸かった。 成り行きで二度目の風呂に付き合う事になったシアンは、始めのうちこ…

ジェナが駆け出して間もなく、青白い光球が二つ空へと打ち上げられ、それが消えるのとほぼ同時にりーん、りんりーん、と鈴の音の様な音が何処からともなく聞こえてきた。 結界の外でジェナや村人達が動いているのは木々の間から僅かに見えているが、周囲に人…

シャール

小さい頃から聞いているけれど慣れるものでは無いのだろうか、と湯から上がり服を着る途中でシャールはお腹に響く警鐘の音に走り出した。 上はまだ下着しか身につけていないが、構うつもりはないらしい。 本当なら飛んだ方が速いのだが、長湯で湿っぽくなっ…

ジェナ

視線を木々の間から漏れる光の方へと据えて闇の魔術を行使し続けるジェナの表情には鬼気迫るものがあった。 結界を挟んだ目と鼻の先で妹がどのようなものであれ"警鐘が鳴るほどの魔獣"を相手にしているとなれば無理の無いことだろう。 自分に出来るのは一刻…

アウェイク

この村はまるで川の中洲の様な場所にある。 正確な事を言うならば、人為的に川を二つに分け、周囲から切り離した土地に村を築いたのだ。 豊富な水と豊かな森、何より精霊の力の強い土地だった。 数年に一度は大水に襲われるが、それも土地を豊かにする一つの…

警鐘

話している間中、寝湯に座ったままだったシャールは俯せになるとふぅと息を吐き力を抜く。 そう熱い訳ではないが、湯に浸かりはじめてすぐに全身に散った桃色の傷痕が赤みを帯び、その白い肌との対比でより生々しく、より痛々しく映るが、闇に沈んだ林を背景…

レノ

「父や私達を見ればほとんどの人が驚くわ。多分それが普通。特に父の言葉は人には判らないし、私達や母だっていくつかの決めごとにそって理解してるだけ。長く住んでるとは言っても村の人たちとは一定の距離があるの」 「私達も子供の頃は喧嘩するのに足を使っ…

お風呂

川沿いの林の一角が開けているが、簡単な板塀が視界を遮り、奥は見通せない。 岩に当たる水の音、風に吹かれた木々のざわめき、時々どこからともなく聞こえて来る鳥の声。 板塀の奥には湯の張られた岩風呂があった。 元々一枚岩なのか、魔力で接いであるのか…

アルナに連れられたシアンが家の前まで来ると、後ろからジェナとシャールが並んで歩いてきた。 先程までの足先まで隠れる裾の広がったワンピースと比べるとずいぶんとラフな装いで、翼は元より、膝下丈のズボンから見える足に自然と目が行く。 足先に鋭い爪…

姿 形

「シャト来たよー」 シャールが家の戸を開けて声をかけると、とたとたと走る足音とともに一人の女性が現れ、シャトをぎゅーっと抱きしめた。 「いらっしゃい! もぅ、来ないのかと思ったわ」 シャトとそれほど変わらない背丈に、襟足で一つにまとめた一見すると…

結界

「結界くらいどこの村だって張ってるよ。山の中なら尚更だ。まぁ、村を囲むように結界が張ってあるんだとしたらそれは珍しいけどな」 シアンがそう言うと、カティーナは何もない空間に手を伸ばしていくが、中途半端に肘が曲がった状態で動きが止まる。 一度引…