書きたいんです。ですけれどね、なかなか気合い入らなくて…。誰か気合い入れて…。
「…あの人は私が口にした全てを忘れているわけではありません。きっかけさえあれば徐々に繋がります。…完全に、とは、いかないようですし、新しい出来事ほど曖昧になりやすいようですけれど」 『水が飲みたい』とゆう魔術師の言葉をうけて部屋を出た細工師は、…
魔術師の瞳は開かれたとはいっても虚ろで、どこに焦点があっているのかも分からない様子らしかった。 魔術師の上でたゆたうフィユリさんの横から顔を覗き込むように首を伸ばした細工師は『分かりますか?』と少しだけ声を張るようにしてゆっくりと尋ね、魔術…
また気がついたらほぼ二ヶ月何も書いていない状態になってしまっています。少し落ち着いたらまた少しずつ進めるつもりです。本当に終わりが来ないまま先細ってしまうのはさけたいな、と書いたことがフラグになりそうで怖い今日この頃。体調にお気をつけてお…
ここで暮らし始めてから今まで、必要最低限の外出しかしてこなかったし、街へ出たとしても通る道はいつも同じもの、こうして普段なら通らない道を歩き、曲がらない角を曲がる…なんてことをしてみると、行き止まりにぶつかったり、ぐるりと回って同じ場所に出…
それからしばらく、屋外から聞こえて来る賑わいの中で三人とも口を開くこともなく、時々手にしたカップを静かに傾けていた。 骨張った長い指の先、落としきれない油の染みた平たい爪、職人としての年月が伺える細工師の手。 およそ魔術師とは思えない日に焼…
「彼女に初めに気がついた人が一番近かった彼の家に運び込んだそうです…」 「…驚きました、突然のことでしたから…。私は、水の力はあまり使えません…。街の方、なら…私のところには来なかったでしょう…。ネイ…あの子の名です…ネイのご家族とは、話したことはあ…
僕は目の前の出来事に置き去られるように、俯いたまましばらくじっとしていたレリオさんの視線が上がり、少女の背を見送っていた細工師と、お互い顔を見合わせる様にして意味ありげに、ため息混じりに微笑むのをただただ眺めていた。 少女が飛び出してからず…
そんな少女の様子に、とゆう事なのか、レリオさんは困ったような顔だけれど安心した様子を見せ、小さなため息をついたあとで微笑みながら再び口を開いた。 「では、ここではずっと魔術を…?」 「はい、怒鳴られたり蹴飛ばされたり…そんなことばかりでしたけれど…
自分でも何がきっかけで魔術師があのような行動に出たのかが解らないまま、事実を羅列するように言葉をつないでいたのだけれど、聞いている側はより解らないとゆう事なのか、地下にやって来てすぐに魔術師を包み込むように気配を広げ、揺らぐ球体のような状…
新年の更新しないうちに1月が終わってしまうんじゃないか!? …と、そんな感情を抱いております今日この頃です。 皆様いかがお過ごしでしょうか。遅ればせながら新年のご挨拶を申し上げます。数日中に再開するつもりでおりますので、本年もまた長い目でお付…
年内もう一話更新しようと思っていたのですが、辿り着けそうにないので本年はここまでと相成ります。 長く休んだ上にぽろぽろと日のあく更新になってしまっていますが、どうにかこうにか、もうしばらく続けて行くつもりです。 あちこちでわかりづらかったり…
レリオさんの家を訪ねたその日から、精霊と細工師の言葉の通り、寝る以外のほとんどの時間を地下の工房で過ごしはじめた。 工房で本を読み、魔術師が過去に作った魔道具から写し取った式を読み解く事を繰り返す…、そして、自分で式を刻むために魔力を込めよ…
工房に戻った僕を迎えたのは、しゃがみ込んで壁に背を預けた、あからさまに機嫌が悪く、そのことを隠そうともしない魔術師だった。 ここしばらくは閉ざされていたはずの、道から直接地下へと続く階段の降り口につけられた扉が開け放たれていて、すぐそこにい…
手紙を読み終えたのか、レリオさんがかさかさと音を立てながらその紙を畳む横で、僕と変わらないか少し年下だろう少女が口を開いた。 「いずれは工房を畳むつもりだと、これまではそうお聞きしていました。…この手紙には貴方が工房を継ぐとまでは書かれていま…
嘘をつくとゆう事と、フィユリさんの言葉と周囲を満たす気配の間で考えが揺れ、僕は長く黙った後で『どうすればいいんですか?』と口にした。 「嘘を突き通すつもりがあるのね?」 頷いた僕にフィユリさんは小さな声で『ありがとう』と言ったのだけれど、その…
「出来る?」 「…嘘を、つく、とゆうことですよね…」 「そうよ。でも貴方の為だけじゃない。あの子が自分で考えを整理する時間にもなるはずだから…」これまで知らなかった工房と依頼について、細工師と言葉を補い合うようにしながらフィユリさんは一通りの説明をし…
「…それで、あの子は?」 「…問題ありません。いつも通りです」 机の上にはフィユリさんが宿った魔導人形の壊れて取れた首から上が、布を詰めた籠の中で少しだけ上向くように置かれていて、そのまま瞬きもなく口を動かしている。 はじめは籠も無く、薄い布一枚を…
「…フィユリさん…?」 "何? 変な顔して、まるで夢から醒めていないみたい…" こちらの心を見透かしたかのような言い回しに、僕は水の滴る前髪が額に張り付いたまま口を半開きにして固まっていた。 自分としては、それほど長い間そうしていた覚えはないのだけれ…
「…フィユリさんと、シギーさんは…」 魔術師の言葉を借りるならシギーさんにとってのフィユリさんは"大切な相手"、そしてフィユリさんにとっても同じなのだろう、とは思ったのだけれど、その関係性を言葉に置き換えることが出来ないまま言葉が途切れた。 た…
これからしばらく、内容の確認を兼ねてリハビリのつもりで過去話の誤字脱字を修正するつもりです。 修正が現行話にたどり着く頃には書き始められたらいいなぁ…とゆう個人的希望を明記。 休みはじめも思ったけど、何であんなに切りの悪いところでやすんでるん…
ご無沙汰しております。 自分自身でもこんなに間が空いてしまうとは思っていなかったので、ぅわーっ、とゆう感じではあるのですが、ひとまず生存確認のつもりでこれを書いています。 少し環境が変わった事もあり、なかなか気力とゆうか気持ちとゆうか…が追い…
しばらくお休みします。 毎日更新は遥か昔のことになっているのに紹介文変えてない気もいたしますが、気持ちだけは毎日更新のつもり、とゆうことでどうかひとつ(吐血 本編になかなか戻れないねぇ。
「さっきの…フィユリさんの話なんですが…」 話に付き合ってくれるつもりらしく、一度魔術師の眠っている方を振り返った細工師は、さっきまでと同じように少し離れた椅子に座り、椅子ごと、さっきより少しだけ身体をこちらに向けた。 「フィユリさんのことは…
普段を知らなければ、いつも見ていなければ、波の変化は判らない。 知っていたはずのことなのに、改めて"目に映ったものしか見ていなかったのだ"と、初めのころに見た、強い波を放つ魔術師の姿を思い出し、その姿に今の魔術師を重ねる。 この二年、僕につき…
細工師は魔術師に薄手の布団をかけると、静かに僕を工房にある椅子へと促し、『少し話しませんか』と意識の半分は魔術師の方へ向けたまま、僅かに光る涙の跡をごしごしと擦って鼻をすすり上げる。 僕の方は僕の方で整理のつかない頭を落ち着かせようと、まだ…
その空間を満たすその空気には魔術師も気がついている様子で、微かに目を開いて精霊の方に視線を投げることもあるのだけれど、喋ることをやめようとはしない。 「何年もかかってやっと一発。シギーは約束を守ってくれた。それまでにも文字とか、知っていた方…
「過去の出来事から新たな慣習が生まれるのは当たり前の事なんでしょうし、精霊や神格者なんかに対する畏怖や畏敬の念からくる信仰には何の文句もない。でも、私のは別。当時は知りもしなかったけど馬鹿な話よ。たった一度、街がエテバスのせいで滅びかけた…
少し間が開いて、嘲笑するように息を漏らした魔術師は『…呆れるわね』と顔をこちらから遠ざけるように壁の方を向く。 「今、心配されてるって勘違いしたうえに、そのことが嬉しいとか思っちゃったわよ…。いちいちいらいらするし面倒だし、諦めて出ていかない…
地下、正確には半地下の部屋の中、天井のすぐ下にある窓だけがやや明るい。 二階にも個室があるらしかったけれど、工房の奥を簡単に仕切っただけの空間を魔術師が寝室がわりに使っていて、今明かりは無いものの、精霊が躊躇いもなく向かうそこに魔術師と細工…