ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ある魔術師の記憶 21

魔術師は家に向かう前に水鏡に寄り、何故かその水鏡の魔術師をともなって足早に街の中を進んでいく。 街の水鏡は一人だけで僕も顔だけは知っているけれど、二人はどうやら顔見知りらしかった。 言葉を交わすことは殆どないものの、あまり人を寄せつけない魔…

ある魔術師の記憶 20

「さっさと乗って」 「…これは?」 目の前には鞍をかけられた竜馬の姿。 周囲に広がる波の様子から、ここに来るときに出会った獣遣いが連れていた竜馬だろうか、とは思ったのだけれど、何故ここに居て、しかも"乗れ"とはどうゆうことなのか…と戸惑っていると…

ある魔術師の記憶 19

「ひどい顔ね」 夕方になって現れた魔術師はそう言うと並んだままの料理を下げ、その代わりの料理を再び棚に載せる。 「今朝…食事を届けるのを忘れてたから、それについては悪かったわ…と、思ってきたのだけれど、全然食べてないし、寝てもいないの?」 「……

ある魔術師の記憶 18

"眠れなかったの?" 夜明けとともに姿を見せた精霊は昨日と同じ冷ややかな目のまま、心配そうな声を出す。 "食事も…水くらい飲まなきゃだめよ" 「気にかけるふりですか?」 "変なこと言うのね? どうしてふりだと思うの?" 「隠す気もないのでしょう?」 "噛…

ある魔術師の記憶 17

その日は陽が暮れるまで魔術師の姿を見ることもなく過ごしたが、空が完全に夜の色に染まる直前、重々しく扉が開き、食事を手にした魔術師が未だ苛立ちの残る顔を見せた。 「…足は?」 「痛みはずいぶん楽に…」 「どうゆうつもりでここに来たの?」 気圧され…

ある魔術師の記憶 16

「しばらく見てねぇが、爺はどうした?」 「もう死んでるわ。そろそろ、二十年…くらいかしら」 魔術師と獣遣いの会話が途切れたところで尋ねた小鬼は返った答えに腕を組んで宙を見上げた。 「いくつまで生きた? 流れ者としちゃ長く生きた方だろ?」 「何か…

ある魔術師の記憶 15

「…ってぇ!!!!」 痛めた足を庇うつもりで身体ごと地面に転がり声を上げた僕を冷ややかな目で見下ろした魔術師は、精霊を見上げると『何処でも良いから上に放り込んどいて』と投げかけ、僕の身体はまた宙に浮く。 「待って! 聞きたいことがあるんです!…

ある魔術師の記憶 14

岩場での出来事から小一時間後、薄ぐらい室内に点された魔石を背にした魔術師は戸口に立った僕を含めた一団を見てあからさまに顔をしかめていた。 「…何の嫌がらせ?」 戸口からすぐの場所には竜馬を引いた若い女性が一人、引かれた竜馬の背には僕が乗せられ…

ある魔術師の記憶 13

向かう魔術師の街との間には岩が張り出した山があり、隣町から先は道が二つに分かれる。 一つは山を避けた、なだらかだが距離のある道…大抵は馬車や何かを使ってこちらの道を通る…で、もう一つは半分岩に張り付くようにして登る難所はあるけれど、ほぼ最短距…

ある魔術師の記憶 12

「え、あ、いや、素敵…? ですけど…。何で…契約してたら出来ることが限られるはず…」 「契約してるなんて言った?」 「だってその姿であの人について動いているんじゃ…」 「別に契約してなくたってそれくらいしても構わないでしょう? まぁ、契約はしてなく…

ある魔術師の記憶 11

工房のことに関して二人はそれ以上何かを言うことはなく、『突然訪ねてごめんなさい』とだけ口にすると母達に挨拶をして帰って行った。 母達は二人が帰った後で何か言いたげだったが、こちらの様子を見て口をつぐんだらしく、そのまま僕は自室に戻り布団に潜…

ある魔術師の記憶 10

「…殴って悪かったわ。まぁ、歯が折れなかっただけ良かったと思って」 悪いと言いながら、そう思ってもいなさそうな魔術師は自分の唇を引き、歯の足りない口の中を見せた。 「さ、て、と。…荷物は近いうちに取りに行ってもらうから、そのまま預かっていて。……

おしらせ。

(二、三日は二、三日前に過ぎている…吐血) 明日辺り再開予定です。