ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

魔術師達の家へ

魔術師達の家へ 16

カティーナ達が川を越えると、シャトはオーリスを抱きしめた。 「ごめんね。そばに居るから…」 シャトの言葉を受けたオーリスの毛が逆立ち、辺りの空気が動き始める。 それは魔術師達の家向かって集まり、小さな渦を作り遥か上空に吹き上がっていく。 辺りに漂…

魔術師達の家へ 15

「カティーナ殿が見たとゆう腐り落ちた生き物をできる限り世界の外に出したい。液状になっていると言ったが、干し草か海藻か…何かに吸わせることは出来るだろうか」 話を聞いて、タドリ達の淡く光る身体を気にするシアンを余所に、カティーナは部屋一面に溜ま…

魔術師達の家へ 14

森を進むと段々と生き物の気配が増えていく。 さえずる鳥は驚いたように飛び立ち、獣は走る私達を恐れるように息を潜める。 この先は辺りで一番精霊の力の強い場所、森の中に湧く泉。 長老が脚を緩めると、全員がそれに合わせ息を整える。 泉はまだ先の筈だ…

魔術師達の家へ 13

カティーナはずいぶん長い間考えていたが、自分で頷き、話し出す。 「私に出来るのは壁に出来た傷が治るのを助ける程度の事です。傷を広げようとする力が強ければ役には立たないかもしれません。道を創る事に関してはある程度自由に出来ますが、人が通り歩き…

魔術師達の家へ 12

「何故って…何で?」 シアンは考えるのを放棄したのか、シャトに聞き返し、こめかみの辺りを掻いている。 「…聞いておいた方がいいのかと…」 少し間を置いてそう答えたシャトに、シアンは、 「なんか他人事みたいだな」 と言ったが、再び『何故ねぇ…』と首をひねり…

魔術師達の家へ 11

「何してたんだ…? あ、いやそれより、森の中を来たのか?」 シアンが尋ねると、カティーナは頷き、森を振り返りながら答える。 「嵐に飲まれた時に罠は全て暴発したようです。辺り一面に新しい傷や焦げ跡が残っていました。通っても問題ありません」 「少し、臭…

魔術師達の家へ 10

「カティーナは?」 ガーダから少し遅れてシャト達の元に戻ったシアンはそう聞きながら、離れた浜に見える舟を眺め、辺りにカティーナの姿を探した。 「向こうに着いたときに手を振っていました。それからは姿が見えませんが、騒ぎが起きたりはしていません」 シ…

魔術師達の家へ 9

「あんた、ずっと街の皆が怖かったのか?」 その言葉にそれまで抑えていたものが溢れ出したのか、スティオンは大声をあげ、シアンにつかみ掛かる。 「だったら何だっ!! 人が一人も居ない街で獣に囲まれて暮らす思いが分かるか!? あの爪も、牙も…! 人が来る…

魔術師達の家へ 8

カティーナが崖を上がりはじめた頃、ガーダに担がれたシアンはスティオンの家に着いた。 ガーダはすぐにシアンを下ろし扉を強く叩くが、返事は無い。 「誰もいないのかぁ…!」 シアンが声をかけながらノブに手をかけると、扉は抵抗無く開き、ガーダ共々中を窺…

魔術師達の家へ 7

舟が浜に乗り上げると、それまではオーリスの起こす風のせいかあまり感じなかった腐臭を、顔を覆った布など意味が無いのではと思うほど強く感じた。 カティーナは顔をしかめたが、シャト達の顔が自分に向いている事に気付き、大きく手を振って無事を知らせる…

魔術師達の家へ 6

「カティーナ殿は本当に嵐の中でも平静を保っておられるようだ…」 マルートは呟き、胸に手を当て祈るように目を閉じた。 しばらくそのまま動かずにいたが、自身を奮い立たせる様に拳を強く握ると振り返り、 「皆、客人に頼ってばかりは居られない。今一度精霊の…

魔術師達の家へ 5

「こちら側からでは見ることは出来ないが、あの崖の上に魔術師達の家がある。崖は森の奥まで続いていて罠があるのはそちらの方だ、崖を囲むように巡らせてあるらしい。海からならば浜に舟をつければ家とそこへ続く道が見えるはず、不用意に奥へは行かぬように…

魔術師達の家へ 4

「カティーナ、魔術式って分かるか?」 シアンの問い掛けにカティーナは頷き、土の下から覗く魔石を指差す。 「それに書いてある模様の事ですよね」 「ん、まぁそうなんだけど、どんなきっかけで、何が、どれくらいの規模で起きる、って事を魔力を込めながら書い…

魔術師達の家へ 3

「何があった?」 川にかかる丸木の橋を越え、始めに口を利いたのはガーダだった。 「海です。溢れている…」 「…? 海は凪いでいる。どうゆうことだ」 「その海ではなくて、壁の向こう側の海です。壁が傷ついているのでしょう、こちら側に溢れてきているのだと思い…

魔術師達の家へ 2

街の外れにはすでに数人のイマクーティが集まっていた。 その中には三人の毛色違いのイマクーティの姿もあったが、その内の一人がタドリだとゆうことにシアンは驚き、ガーダに尋ねる。 「タドリも行くのか?」 「自分から行くと言い出した。今日集まった者は皆…

魔術師達の家へ 1

ガーダの家で一夜を過ごし、夜明けと共にシャトは起き出した。 カティーナはすでに起きていて、長い髪を解き手で梳いている。 「カティーナさん、おはようございます」 「ん、おはようございます」 シャトの声に振り返り、薄明かりの中で微笑むカティーナは、髪…