ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

獣人の街

獣人の街 15

「どうゆうつもりだ! シャト!! ウラルッ!!!」 「ウラルさんを怒らないで…! 私の為に教えてくれたんです、知らないままで何かがあったら私…ガーダさんわざとでしょう? 私が嫌がるの分かっててナガコさんのこと」 「そうでもしなければスティオンと話すらし…

獣人の街 14

「ウラル、ちょっといい?」 ウラルを呼び止めたシアンは近付きながら持ってきた荷物をがさがさとあさり、片手で取り出すには少し大きい包みを引っ張り出した。 「これ、料理に使ってくれる? 火は入ってるからそのままでも食べられるんだけど、どうだろう」 包…

獣人の街 13

「あとでガーダに聞こうかと思ってたんだけどさ、街の魔術師と折り合い悪くて話をしなかったにしても、何で街の皆は自分達で北? 魔術師達が住んでるってところの様子を見に行かなかったんだ?」 「行きたくても行けなかったのよ」 シアンの問い掛けに答えると、…

獣人の街 12

浜でヒニャ達と話した事、雄に絡まれ騒ぎを起こした事、ガーダが危ないところを助けてくれた事、シアンは話終わるとカップを置いて姿勢を正した。 「騒ぎたてないようにと思ったんだけど、余計に騒ぎ大きくして…反省してます。ごめん」 シャトに向かって深々と…

獣人の街 11

ウラルとガーダの家は森の近くにあった。 この街の家は丸太で組んだ骨組みの間に、土で固定しながら石を積み上げることで壁を作るが、その一軒一軒がずいぶんと大きく、ウラルとガーダの家も例外ではない。 「これで一つの家なのか?」 シアンがそう言うと、ウ…

獣人の街 10

シアンがガーダに連れられ長老達やシャトの居る部屋に入ると、一同の中央に立ったローブ姿の男が振り返り、ちらとシアンを見た。 その視線は何処か敵意を含んでいるような冷たいものだったが、薄暗い部屋の中でもあるし一瞬のことでシアンが気付くことはなく…

獣人の街 9

二本目は右腕、三本目は腹の下を抜け的確に左の脚の内側を黒く染めた。 走っている雄はまだ矢の当たっていない左腕を隠すような角度で木々の間を縫い、シアンに向かってくる。 徐々に距離がつまり、森を抜けるまでそう時間はかからないだろう。 シアンは相手…

獣人の街 8

森へと移動したシアン達だったが、浜からここまでの間に騒ぎを聞き付けたイマクーティ達も何が起こるのかと集まり、ずいぶんと見物客が増えている。 「さて、君の弓が飾りじゃないとゆうなら、簡単な賭けをしよう。君はその弓で矢を射るだけだ。君が勝ったら…

獣人の街 7

その頃、カティーナはシャトと共に長老達の前へと通され、薄暗い部屋を前に、緊張した面持ちでいた。 広い板張りの床に敷物は無く、二人分の椅子が置かれてはいるが、すでに集まっていたイマクーティ達は床に直接膝をつくようにして座っている。 「参りました…

獣人の街 6

「はぁー美味かった。ごちそうさまでした」 シアンは食べ終わると砂浜に放り出してあった魔石を手に取り、魔力を込めていく。 「ほどほどでいいからね。この街じゃ魚より魔力の方が貴重だって言ったろ、魚一匹で頑張られたら困っちまう」 ヒニャは魚や網を片付け…

獣人の街 5

「海獣のいる海にねぇ…二人ともよく生きてたな」 「はっきり覚えてはいないんですけれど、シャトさんが海の中で海獣に向かって何か言ってたんです」 「海の中で?」 タドリは頷き笑顔を見せる。 「誰も信じてくれないんですけどね!」 「…それで、暴れてた海獣はどう…

獣人の街 4

その日は間もなく冬を迎える街に荷物を届けに来た父親について、シャトも遊びに来ていた。 寒さは厳しくなってきていたが、いつもと変わらない穏やかな日。 シャトはオーリスと一緒にイマクーティの子供達と林の中で遊んでいた。 まだまだ体も小さく、すでに…

獣人の街 3

林を抜け、街に入るとイマクーティはもちろんだが狼の姿も見受けられた。 ガーダが辺りを見回し、誰かに手を挙げてこちらに来るようにと合図をすると、周りのイマクーティ達とは少し毛色の違う一人が走って来る。 その姿を見ながら、ガーダは身体を屈めシア…

獣人の街 2

崖を下り終え足元が傾斜の緩い岩場になると、走りながらガーダは口を開いた。 「街の北、魔術師共の家の辺りで何かが起きているらしいが、今回の呼び出しには賛成しない者も多かった。原因が魔術師にあるならば、頼るべきは魔術の扱える者だと皆分かっている…

獣人の街 1

洞窟の出口が見えてきた。 空の青と、遥か遠くの山に積もった雪の眩しい白を岩が縁取っている。 一歩進むごとに視界が開けていくが、その様子にシアンは目を見張る。 白く染まった険しい山の連なり、その裾野に広がる広大な森、そして入り組んだ海岸線ときら…