ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ある魔術師の記憶 36

「…それで、あの子は?」 「…問題ありません。いつも通りです」 机の上にはフィユリさんが宿った魔導人形の壊れて取れた首から上が、布を詰めた籠の中で少しだけ上向くように置かれていて、そのまま瞬きもなく口を動かしている。 はじめは籠も無く、薄い布一枚を…

ある魔術師の記憶 35

「…フィユリさん…?」 "何? 変な顔して、まるで夢から醒めていないみたい…" こちらの心を見透かしたかのような言い回しに、僕は水の滴る前髪が額に張り付いたまま口を半開きにして固まっていた。 自分としては、それほど長い間そうしていた覚えはないのだけれ…

ある魔術師の記憶 34

「…フィユリさんと、シギーさんは…」 魔術師の言葉を借りるならシギーさんにとってのフィユリさんは"大切な相手"、そしてフィユリさんにとっても同じなのだろう、とは思ったのだけれど、その関係性を言葉に置き換えることが出来ないまま言葉が途切れた。 た…