ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

名付け

「しーあーんー。かてにゃー。ちゃっと」 お二人の名前、と尋ねられた事はわかっているらしかったが、魔獣はそれには答えず、シャトのことらしい音も加えたあとでシャトに向かって何度も鳴いた。 「名前、つけてほしいみたいです。ずっと二人でいたらしいの…

道のり

シャトの頭の中を読めるわけでもなく、それ以上突っ込んだ話を聞く気はないのか、シアンは"いろいろめんどくさいんだな"と言いかけて、自分が感じたこととはいえ言葉が過ぎるか、と、思ったらしく、一度口を閉じ当たり障りのない言葉を選ぶ。 「なんか、いろ…

香り、のようなもの

魔獣達について行くと、森からはかなり離れた生き物の気配のない岩場にたどり着いた。 見える場所にはシャトとオーリスの姿はなく、シアン達が姿を探して辺りを見回すと、足元に大きな影が落ちる。 見上げるとシャトを乗せたオーリスがゆっくりと坂を下りる…

招かれざる者

菓子を手にしたままうとうとしているシャトを眺めていたシアンは、カティーナが立ち上がって振り返った事でそちらへ顔をむけた。 「どうした?」 「…いえ、何かが、近付いて来たような感じがしたのですが、突然消えて…」 「遠ざかったとかじゃなく?」 「ど…

水場

「シャト?」 「…はい…?」 シャト自身には言葉を発したとゆう自覚はなく、あくまで、思っただけ、のつもりだったようで、シアンに顔を覗き込まれて不思議そうに首を傾げた。 「力が強いって、大きい方の子?」 「…? えぇ、たぶん」 自分で口にしたつもりは…

魔獣達はどちらも随分と元気を取り戻し、過敏になっていた音や動きへの反応も大分落ち着いたが、ただ一晩休んだだけでそれだけの回復をみせたことにシアンは多少なりとも驚いていた。 嵐の影響で回復力が上がっているのか、それとも元々回復力の高い種族なの…

眠気

交代の時間になって起き出してきたシャトは相変わらず生気の無い顔をしていたが、カティーナは簡単な挨拶をすると『無理なさらないでくださいね』とだけ付け足し、オーリスを撫でて微笑んで、そのまま幕の中へと向かっていく。 最後に振り返って見たシャトは…

曇り空

その夜はシアン、カティーナ、シャトの順に見張りにつくことになったが、オーリスの陰に休む二匹の魔獣を気にしているのか、シャトはカティーナが休んだ後もシアンと一緒にしばらく起きていた。 「あの子達、名前は?」 膝に乗ったキーナを撫でながら、ぼん…

シアンとカティーナが夕食の片付けを終えたのを見計らったかのように戻ったシャト達だったが、大きい方の魔獣はゆっくりながら自分の足で歩き、その代わりとゆう訳ではないがオーリスの背には小さい方の魔獣がしがみついてシャトは腕にキーナを抱えていた。 …

夕食

嵐の中で随分長いこと不安を抱えて彷徨っていたらしい魔獣達は落ち着いているように見えたが、シアンや街道沿いで他の生き物のたてる音に敏感に反応し、身体を震わせたり、縮こまったりと時折落ち着かない様子を見せる。 しかし、人間やその他の種族を嫌って…

おしらせ。

お休みしています。 (昨日あげたつもりで下書きに入ったままだったもので…) 次回は金曜日に更新予定です。

適性

シアンはカティーナもローブを縫っているし、と、染みになっただろうシャトのワンピースの代わりに自分の買った布で服を作ったらどうか、とシャトに振ったのだが、シャトは遠慮とゆう訳ではなく替えの服はあるからとその提案を断った。 朝食を済ませて周囲の…

影響のかたち

シアンに覗き込まれた魔獣は、牙の見える小さな口と黒々と濡れた大きな瞳で愛らしく見える。 だが、怯えたようにカティーナに擦り寄った後で出した声は潰れたように濁り、その様子と見た目とそぐわない響きにシアンは近付けた顔をゆっくりと離していく。 「……

おしらせ。

本日はお休みです。

呆れる

カティーナが野営地を離れる時にかけた声で目を覚ましたシアンだったが、カティーナが何を言ったのかは理解してはおらず、幕を出た先にオーリスしか居ないことに首をひねった。 「オーリスー二人は…?」 返事があってもシアンには解りはしないのだが、一点を…

狂気のこと

シャトはこの場で話をすれば魔獣達にも伝わるからなのか、魔獣の顔を覗き込むと微笑み、その身体をいたわりながら静かに口を開いた。 「家にいらした時、たしか少し話がでましたよね。狂気に呑まれる者が増え、世界の秩序が崩れやすくなっている、とゆう話も…

助けるため

これまで一緒に過ごした時間は長いとは言えないが、カティーナは、シャトは他者が傷付く事を人一倍嫌うのだろうと感じていた。 しかし、目の前に居るシャトは自ら剣を振るい、その剣で切り伏せた魔獣を前に血飛沫を受けた顔で微笑んでいる。 その様に声を失…

わざわざ二人で見張りについたのだが、その夜は穏やかで、どこか遠くから獣の遠吠えが聞こえてくる事はあっても近くに生き物の気配を感じることもなく、夜中の交代の時間までさほど気を張らずにそれぞれが思い思いに過ごしていた。 「そろそろか?」 「そう…

嵐の方へ

下で、と別れたものの、廊下でいつもと変わらない荷物を持ったカティーナと顔を合わせたシアンの荷物は、いつも下げているおおぶりな袋以外に背中に布の包みが増えていた。 すぐに街を離れるとゆう事を聞いていたのか、階段を下りてきた二人の姿を見るなり女…

おしらせ。

眠すぎて辿り着けなかったのでお休みします。(おい 因みに明日はたぶん更新できないのでまた明後日。 おやすみなさい。

気付き

「二人ともお帰りなさい。シャトちゃん先に戻ってきてるわ。とりあえず危険はないんですって?」 二人を出迎えた女将はにっこり笑ってそう言ったかと思うと、食堂の客達の中へと軽やかにうつっていく。 客達の話題は先ほどと変わらず嵐と運び込まれた獣人達…

じっと絵を見つめたあとでカティーナは首を横に振ったが、シアンは首をひねりながら眉をしかめている。 「なんか、南の山の方で似たようなの見たことある気はするんだけど、この膜みたいな翼がなぁ…」 首を傾げたままのシアンのよこでシャトとライマは顔を合…

必要な距離

「は…?」 シアンはライマの言葉に遠慮のかけらもなく、訳が分からない、とゆう顔で聞き返した。 「私にパートナーはいまセん。獣遣いとシても特別珍しい事ではありまセん。見た目だけで獣遣いを区別できる人はいないでシょう? 私の様に隠さずにいる者以外…

違い

シャトを訪ねてきた獣遣い、ライマの家は街の一角の、家々が建ち並ぶ通りの隅にあった。 周りが開けている訳でもなければ、家自体が大きいとゆう訳でもなく、周囲に特別動物の姿も無いが、シャトは迷いなく扉をノックする。 「お待ちシていまシた。どうゾ」 …

会話

カティーナとシアンはシャトの後を追うように少し遅れて部屋を出て、階段の途中から下の様子を窺う。 宿の入り口に立つシャトは握手をするように外から伸びる浅黒い肌の手と自分の手を繋ぎあったまま何か言葉を交わしているようだった。 ただ大陸には握手を…