ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

適性

シアンはカティーナもローブを縫っているし、と、染みになっただろうシャトのワンピースの代わりに自分の買った布で服を作ったらどうか、とシャトに振ったのだが、シャトは遠慮とゆう訳ではなく替えの服はあるからとその提案を断った。

 

朝食を済ませて周囲の片付けを終えると、シャトは魔獣がオーリスの背に乗る手助けをし、翼の魔獣を胸に抱える。

ティーナが抱えていた時はそれ程気にはならなかったが、その身体に対して随分と大きな翼はシャトが傷を庇うように抱えると体格差の分持て余しているように見え、カティーナはシャトにではなく魔獣に直接『私が抱えても構いませんか?』と声をかけた。

魔獣が小さく鳴くとシャトが代わりに返事をし、カティーナはその腕から優しく魔獣を自分の胸へと抱え直した。

 

「行きましょうか」

シアンを先頭に一行が歩き始めると、カティーナはさっきシアンが口にした服を作るとゆう言葉からシャトとの話を思い出したのか、胸に抱えた魔獣を気にかけながら普段より抑えた声で尋ねる。

「シアンさんも縫わずに布を繋げることが出来るのですか?」

「あ? なんで?」

「この世界にもそのように作られた服があるとゆう事は知っていたのですが、シャトさんからもしかしたら、と」

「あー、出来るよ。上手くはないけどな…。このシャツは自分で接いだやつ、縫うより早いけどどっちかってゆうと縫った方が着心地はいい、な、たぶん。上手い人がやると早いし着心地もいいんだけどな」

「誰でも出来るものなのですか?」

「いや、基本的には大地の力が使える人だけだよ。私の適性はほぼ炎だけど、少しだけ大地よりだから魔力は量使うけど出来ないことはない、くらいなとこだな」

ティーナは魔獣の様子を見ながら、シアンの声を聞いていたが、服とは関係のない事が気になったらしく、話をかえた。

「"適性"とゆう言葉は何度も聞いていますが、シアンさんは髪も瞳も赤いでしょう。見た目に現れないものは経験で理解していくのですか?」

「そうゆう部分もあるけど、確かめる魔石があるんだよ。ちょっと大きな街なら大抵置いてある。魔力を込めると…作った魔術師の腕にも寄るけど、ほぼ正確に適性が判るんだ。次それが置いてある街があったら見てみりゃいい」

そこまで話すとシアンは二匹の魔獣を順に振り返り『あんまり街には近付かない方がいいのか?』とシャトに聞く。

それは街の人達が騒ぐ可能性も含めての質問のようだったが、どちらかと言えば、魔獣達が落ち着かないだろう、とゆうシアンなりの気遣いだった。

「…そうですね、出来れば。ですが、その時には私とオーリスが一緒に残りますから、お二人は必要に応じて街の方に」

シャトはふっと微笑んで言ったが、その微笑みはシアンの気遣いに気付いた為のもののようだった。