ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

魔術師達の家へ 4

「カティーナ、魔術式って分かるか?」

シアンの問い掛けにカティーナは頷き、土の下から覗く魔石を指差す。

「それに書いてある模様の事ですよね」

「ん、まぁそうなんだけど、どんなきっかけで、何が、どれくらいの規模で起きる、って事を魔力を込めながら書いたものは何でも魔術式って呼ばれるんだ。ただ、これ複雑で私には書けないから、私の知ってる範囲で説明するけど…」

とシアンは落ちていた枝を拾い地面に二つの円を描く。

「魔術師がこっちの円に居るとして、ここの魔術式には他の魔術式と繋ぐって書いてある。それで反対側、こっちの円には例えば生き物が通ったら知らせる、魔力を込めると明かりがつくって書いてあるとすると、この二つを繋ぐことで、見えなくても特定の場所を生き物が通ったらすぐにその場所に明かりをつけられる」

「術者が居なければ効果が無いとゆう事ですか?」

「いや、こっちの魔術師側の式に魔石を組み込んで、知らせがあったら魔力を込めるって書いとけば魔力が切れるか、式を解くかするまで勝手に動きつづけるよ。むしろ術者がやるより反応が早い分罠に使うならそっちの方が多いだろうな。それから、式は目に見えなくても魔力の形が残ってさえいれば効果は消えない」

「…罠は生きている可能性があると?」

「可能性ってゆうか、まず間違いないだろうな。もし、嵐に飲まれてたら効果が書き替わってるかもしれないし、解くにはその式を理解してなきゃならないし…すぐにどうこう出来るもんじゃないと思った方がいい」

シアン達の話を黙って聞いていたイマクーティ達は、力のあるカティーナでも魔術師の家に近付く事は出来ないのか、とより一層厳しい顔になったが、マルートだけは何かを考えている様子だった。

「シアン殿、海の中にも魔術式を施すことは出来るのかな?」

「海の中…? 私も魔術について知らない事が多いですし、絶対に出来ないとは言えないですが…ただ、海を知っている者ならそれはしないはずです。何が起きるか解らない…」

「魔術師達が浜を歩いているのを見た者は多い。海から行けるのならば、家まで近付くことも出来るのではないか?」

「罠があったとこ歩くよりは良いと思うけど、どうする?」

シアンが尋ねたが、カティーナは何とも言えない表情を見せ、なかなか答えようとしない。

「どうした?」

「海を行くとゆうのは…?」

「ん…? 舟に乗ってけ、って事だろ。凪いでいるし沈みはしないよ」

ティーナは水に入る事になるのではと考えていたらしく、自分の勘違いに気がつくと『あっ』と声を上げた。

「どうする?」

「舟に乗ったことはほとんど無いのですが、問題ないでしょうか?」

ティーナの問い掛けにシアンが何か言おうとした時、それまでずっと黙っていたシャトが口を開いた。

「カティーナさん、嵐の中に行くことはカティーナさんにとって本当に危険は無いんですか?」

ティーナは心配そうに見上げるシャトを安心させるかの様に微笑み、頷く。

「ご心配なく。大丈夫です」

「それなら…舟さえあればオーリスがお手伝いします」

シャトの言葉にイマクーティの何人かは"あぁ"と納得したようだったが、シアンとカティーナはどうゆう事なのか、とシャトを見つめて首を傾げる。

「ちょっと待っていて下さい。舟、借りてきます」

シャトは説明するより実際に見た方が早いと思ったのか、それだけ言うとオーリスに乗って街へと向かっていってしまい、その背を見送りながらマルートが口を開いた。

「舟はシャトに任せて大丈夫だ。シャトが戻るまで魔術師の家の辺りのことを話しておこう」

マルートはだいぶ先の海岸沿いの崖へと目をやり、隣に立っていたイマクーティと二言三言言葉を交わす。

そして大きく息を吐きカティーナに向き直ると、崖を指差し、改めて口を開いた。