文字のお勉強
(ノクイアケスにおける文字はアルファベットがメイン…だと思われます)
休憩中のこと、シアンは足元に落ちていた硬そうな枝に目を止めた。
地面を足で均し、拾った枝でそこに何やらがりがりと書いている。
「カティーナ、ちょっと」
「なんですか?」
「これは読めるんだよな?」
「32 85 174 えっと、一、十…56290ですね」
「数は全部読めるんだな」
シアンは頷きながら、一応0~9まで含むように考えたらしいその数字を足で消し、新たに何かを書いている。
「これは?」
「今日 宿 街 安売り…最後のはなんですか?」
「これは魔術。見たことありそうなもの並べたんだけどな…」
再び文字を足で消すと、今度は文章を書いていく。
「…私、は…えっと…"ナニカ"、欲しい」
「そこは報酬な」
「私は報酬が欲しい」
「ここを…食事…に変えると、私は食事がしたい」
「私は食事がしたい」
「これは"焼く"、スープ、麦、粥…これで飯屋のメニューが少し読める。さて、問題です。さっき書いた報酬は次のうちどれでしょう?」
地面には"包丁"、"放流"、"報酬"、"風習"と似たような音と字面の文字が並ぶ。
「これは包丁ですね…これですか?」
「それは"風習"。意味は?」
「受け継がれている決まりのようなことですよね?」
「たぶん正解。因みにこれが報酬、こっちは放流。貯めておいた水を流すとかそうゆうこと」
シアンは今度は消さずにいろいろと書きながら横に動いていくが、カティーナは途中で首を傾げるとオーリスと並んでその様子を眺めていたシャトを呼ぶ。
「どうしました?」
「ここ、読んでみてくれますか?」
「今日の天気は晴れ。まだまだ暑い。昨日も暑かった」
間違いなく地面にはそう書いてあり、シアンも同じように教えていた。
「疑ってるのかよ!」
「変な顔をしていらしたので。また何か悪戯かなにかを、と」
「そんなこと"まだ"しないって!!」
自分の言葉に『あっ』と声を漏らしたシアン、"まだ"と言った事にカティーナもシャトも気付いている。
シャトはシアンから枝を借りると、地面に"カティーナさんの勝ち"と書いてシアンに笑顔を向ける。
「私の名のあとは何が書いてあるんですか?」
「カティーナは色っぽい」
「シアンさんっ!」
シアンは『もう』と呆れたようなシャトの隣で他の枝を拾って"シャトも負け"と書いてみせる。
「色っぽいってなんですか?」
カティーナのその言葉で、シアンもシャトも一瞬動きを止めたが、シアンは、ぷっとふきだすとそれに続いて声を出して笑い、シャトは困った様にカティーナの顔を見上げていた。