ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

「シャト久しぶり!」

「皆会いたがってるから行ってやってよ」

「シャトねーさん、グルシャも会いたがってます」

「みんな食事まだだろ? 今用意してるから少し待っててな」

「誰だよ共にする相手連れて来たなんて言ったの?」

「馬鹿、本人前にして言うんじゃねぇよ」

「お前らあほなこと言ってるとトクラに殺されんぞ」

「寝るとこどうする?」

なだれ込んできた十人近い人間が口々にシャトやシアン達に話しかけるものだから、グドラマはぱんと大きく手を鳴らし、

「お前達、流石にうるさいよ?」

と窘める。

穏やかな口調だがその後ろに漂う雰囲気にシャトとカティーナを除く全員がぴんと背筋を伸ばした。

よく見ると幕の外にもまだ傭兵団の仲間が集まっていて、中にはティオとそう変わらない年頃の子供も居れば女性も居る。

「さて、そろそろ日が暮れる。皆に会うなら早く行っておいで」

「はい。夜、もう一度伺っても構いませんか?」

「あぁ。待っているよ」

目を細めたグドラマに挨拶をし、シャトに続いて幕を出たシアンは辺りに居る人の数を数えていて、立ち止まったシャトにぶつかった。

「何してるんですか?」

驚いて振り返ったシャトの代わりにカティーナが声をかけたが、シアンはシャト越しに見えた先の様子に『ぅわぁ』と声を上げ目を大きくしている。

さっき空から下りてきた大型の魔獣だけではなく、そこにはすぐに数えられるだけで十五体、どれも身体が大きく、どうやらただの動物では無いらしい姿が並んでいた。

「シアンさんもカティーナさんも一緒に行きますか?」

「いいの?」

「オーリスから離れなければ大丈夫です。オーリス、お願いね」

シアンとカティーナはシャトの少し後ろを歩くオーリスの左右に分かれてついていくが、その後ろから何故かティオと二人の獣遣いもついて来る。

シャトは顔見知りらしい魔獣達と挨拶を交わしながら先へと進み、一頭の蛇…とゆうのだろうか、蝙蝠のような羽と尾の先についた剣のような長く鋭い鱗が目立つ魔獣の前で立ち止まるとすっと手を差し出す。

蛇のほうも愛おしそうにその手に擦り寄り、ティオがその横に並んだ。

「ティオが大切にしてくれてるって教えてくれてる」

「皆には怒られるの。まず自分を守ること考えろって…」

「…ごめんね」

「シャトねーさんのせいじゃないもの。グルシャと一緒に頑張るよ」

他の二人のパートナーらしき魔獣とも同じように触れ合ったシャトは後からやって来た獣遣い達と話しはじめ、オーリスのそばに立っている二人の元にはついて来ていた獣遣いの一人が近付いてきた。

それは"皆会いたがってるから"と言っていた男で、どうやらパートナーはそこにいる者達の中でも身体の大きい方だろう竜のカタル、本人はヤルーと名乗り、にっと歯を見せて笑った。

「これだけ大きいのが集まってるのは珍しい?」

「ん、あぁ。そういえばシャトの家には魔獣は少なかったな」

「おねーさんシャトさんの家まで行ったのか。いいなー、この子、元々シャトさんの家で生まれて、シャトさんのパートナーだったんだ。でも連れていくわけにも行かなくてさ」

竜がシャトの家の生まれだとか、元々はシャトのパートナーだったとか、カティーナはただ聞いたことをそのまま受け入れているらしかったが、シアンは変なことを聞いたとでもいった顔でヤルーに聞き返した。