ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

パートナー

「なにそれ、どうゆう事?」

「そのままだよ?」

「いや、パートナーにかんしては知らないけど、竜は普通人の元で生まれないだろ…?」

「この子、何があったんだか分からないけど卵が森の中に落ちてたんだって。それでシャトさんが他の子達に手伝ってもらいながら孵して育てた子なの。ティオのパートナーも、向こうの奴のパートナーも元々は怪我したりしたとこをシャトさんが見つけて面倒見てた子」

「へぇ、皆そうゆうことしてるのか…」

「皆じゃないよ。シャトさんがと…」

ヤルーはむぐっと口をつぐみ、唇を噛んだままぱちぱちと大きく瞬きをする。

「えっと、ほら、夕ご飯出来たみたい」

お世辞にもうまいとは言えない誤魔化し方だったが、シアンもカティーナも傭兵団としてかシャト個人としてかは判らないが何かあるのだろう、とそれ以上踏み込んで聞くことはせず、他の団員から離れて戻ってきたシャトと並んで歩き出す。

「あの子達もパートナーだったんだって?」

シャトはそう聞いたシアンの顔を見返して少しだけ間をおいて頷いた。

「ティオはここへ学びに来ています。私も三年ほどお世話になっていましたが、ここを出る頃には魔獣を含め複数のパートナーを持つ者が多いんです。ただ、出会ったからといってすべてがパートナーになるわけでもありませんから、時には家族や団の仲間の中で相性のいい子を託されるとゆう事も。今は別の仲間の元にいますが、頭領のパートナーだった方々…あとは頭領のお孫さんのパートナーだった子達も…」

振り返って改めて魔獣達の姿を見つめたシャトの表情は変わらなかったが、手はワンピースを掴む様に握られている。

ティーナは何故かその手をじっと見ていたが、いくつもの篝火の据えられた陣の中心からかかった声に顔をあげた。

「中身はいつもと変わらないが、今日は客人も居る、皆で食べるとしよう」

人数分には少し足りないだろうが、既に楕円を描くように椅子が並べられていて、手から手に木で出来た大皿が回される。

すぐに篝火のそばに列が出来、シャトと二人は"お客さんだから"とその列の前の方に引っ張り込まれた。

飲み物の注がれていないカップを渡されたかと思うと皿に料理が盛られ、流されるように三人は並んで頭領の近くの椅子へと腰を下ろす。

「豪華だな」

シアンが見下ろした皿の上には、別々に炊かれたのだろう紫、黄、茶の三種類の穀物と、豆と薬草のサラダ、彩りの良い野菜の炒め物と何が入っているのかは見た目では判らないが柑橘のような香りのする和え物に果物までのっている。

規模が大きいとは言え、野営でこれだけのものを用意するのは大変だろう、と思っていると、椅子に座った団員達の間で大きな水差しが回りはじめた。

どうやら中身は搾りたてらしい果物のジュース、水、果実酒の三種類らしく、好きなものを、とゆう事なのだろう、シャトはジュースを、カティーナは水を、シアンは果実酒を、とそれぞれがカップに注ぐ。

飲酒にかんして法がある訳でも無いが、大抵は酒を飲むのは仕事につく年頃、十六か十七を過ぎた辺りで、シャトとカティーナにも近くに座った女性が飲むかどうか尋ねたようだったが、二人とも酒を好んで飲むことはないらしく断っていた。

「さぁ、いただこう」

頭領の声に揃ってカップを掲げると、皆談笑しながら食事を始める。

「相変わらず食べないのね。よくそれで持つわ」

半ばあきれた様な女性に曖昧な笑みを返したシャトの皿の上は他の団員達とそう変わらないように見えるが、それでは足りないだろうとどこかから出た手が皿の上の料理を増やしては消える事を繰り返し、いつの間にかシャトの皿の上は山になる。

「太らないとはいってもちょっと細いわ。また増えてるんでしょう?」

「少しだけ」

「なら皆のためだと思って食べなさい」

話の中身はシアン達には解らなかったが、とにかく団の仲間はシャトにたくさん食べさせたいらしい。

それは徐々にシアンやカティーナにも飛び火し、二人の皿の上の料理もずいぶんと増えているが、気がつくとそれまで無かった料理までが乗っている。

「ほらー食べるのも仕事ー!」

楕円の端の方ではティオを含めまだ子供と呼ぶほうが相応しいだろう数人が集められ、やはり山になった料理を一生懸命食べているようだった。