ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

アウェイク

この村はまるで川の中洲の様な場所にある。

正確な事を言うならば、人為的に川を二つに分け、周囲から切り離した土地に村を築いたのだ。

豊富な水と豊かな森、何より精霊の力の強い土地だった。

数年に一度は大水に襲われるが、それも土地を豊かにする一つの恵みとして受け入れ、村人は最低限の家屋や井戸を土を盛り石垣を組む事で守り、この土地に住み続けてきた。

 

しかし、いつの頃からかそれまではこの土地に近付くことのなかった魔獣が森に住み着き、時に畑を荒らすようになった。

相変わらず森も川も豊かで、食べ物に困ることは無いだろう魔獣、人を傷付ける事はなかったが、村人は自分たちの暮らしを守る為の魔術を学びはじめる。

畑を守る結界、村人は魔獣を傷付けることなくそれまでの暮らしを続けようとした。

しかしある年、魔力の嵐に飲まれた魔獣が村を襲い、家々に、村人に、畑に、村のすべてに大きな被害が出た。

そしてその頃を境に魔獣や狂獣が村へと近付くことが増え始め、その回数が増えるにつれ精霊の姿が少なくなる。

森が枯れる等とゆうことはなかったが、村人達はこの土地を離れるべきか、と話し合いを重ねた。

しかし愛着のある土地を離れると言うものは居らず、話し合いはこの土地をどう守るかとゆう方向へと向かう。

畑を守る為の結界が、命を守るための術になった。

山の中のなんでもない村とは言え、時に強い魔力を持つ者も生まれ、そうゆう者達を中心に村の外の魔術師に教えを乞うことで、年を経るにつれ、村の結界は効果の強いものになっていった。

それとあわせて戦うための技を学び、村人達は守るための力を身に付けた。

 

今でも年に十数回、多い時には週に一度程の頻度で結界をかすめ通る者が居る。

長い年を経るうちに、南の山と西の海を行き来する魔獣の通り道になっていたらしい森、中には狂気に当てられたものも居て、警鐘が鳴る度に皆が村を守る為の準備にかかる。

広場の地下にはいざとゆう時のための壕を兼ねた結界の起点を置き、戦えぬ者、結界の保持に当たるものはそこに身を置く。

他の者達にも"持ち場"とゆうものがあるのだろう、数人ずつに分かれて村の周囲の警戒に当たっているようだった。