ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

魔神の棲む山 7

「女の方がどうしてるかは話さないし、街の人達も知らないみたいだったけど、本人はあれからすぐに街の警防団に名乗り出たらしいんだ。それまでに追い剥ぎした物殆どそのまま持ってな。持ち主が分かるものは全部返されたってことだったし、怪我人もそう居ないし、襲われた人等の話で悪いのは女の方、って随分言われてたみたいで、ヴィートは重い刑罰にはならなかったって。街で警防団について、雑用から警備、大掛かりな修繕とか、どんなことでもやってるって」

「追い剥ぎをしていた理由は…?」

「さぁ? 私は聞いてない」

シャトは手紙に視線をおとし、呟いた。

「私、何か、余計な事をしたんでしょうか…」

「…? 余計な事かどうかは相手の受け取り方だろ。あの時何があったのか知らないけどさ」

シアンはカップのお茶を飲み干し、何があったのか、シャトが話すのではないかと待ったが、シャトはそれについてはふれなかった。

やりすぎたとは思っていたが、特別何かをした、とゆう覚えはなく、手紙の感謝しているとゆう言葉にも疑問を持っている。

「ヴィートさんがいる街は遠いのでしょうか?」

「歩きだとまぁ…急がないなら半月くらいかな」

シャトは驚いて顔を上げる。

「手紙を渡すためだけに…ですか?」

「会いに来た、って言ったじゃん。手紙がついでだよ」

シアンは軽いため息をつき、カティーナがかわりに口を開く。

「あの後、シアンさんは洞窟を荒らしていた店をどうにか出来ないか、といろいろ動いていたんですよ。この人の行動力には驚きます。話が集まるだろうと酒場で働いて、顔の広いお客さんと繋がりを作ったり、あちこちの宝飾品を扱うお店の方から良心的な加工店を聞いて回ったり、本当にいろいろと。結果として、あの時シャトさんが寄った村と、他の鉱石加工のお店が協力してあの石を扱う事になりました。量や質が安定すれば、荒らしていた店にはこれまでの様な旨みは無くなるだろうとゆう事だそうですよ。それをお伝えしたいとゆう事もあって、シャトさんに会いに来たんです」

シアンは言わなくていい事まで、とゆう目でカティーナを見ながら、あとに続く。

「村の人間もそれが祈りの場を守ることにつながるならって。元々、魔獣が居るのは知ってたみたいだったし、うまくやってくだろ…」

「…そんな方法が…」

シャト自身は魔獣が洞窟を守っている内は手出しをしない事が礼儀のようにも感じていたし、たとえ何かをしなければと思ったとしても、シアンがとった方法は自分には思いつかない事と判っていた。

シアンは考えこんでいる様子のシャトを眺めて、『考え過ぎは良くないぞ』と笑ってみせる。

「さ、て、と、この辺り少し見て回りたいんだけど、構わない?」

「え、あっ、はい。あ、でも…入ってはいけない場所もあるので私も一緒に行きます」

「そうか…じゃあ、お願い」

シアンはそう言って立ち上がったが、焼き菓子に気付き、動きを止める。

「もう一杯、お茶もらってもいい?」

 

シャトがお茶を淹れ直し、焼き菓子をつまむ二人に周辺の事を話し始めると、それまで姿の見えなかったオーリスが戸口に現れ、三人が外に出てくるのを待つかのように座り込む。

空は晴れているが、日が傾き始めている。

自然のものなのか、それともオーリスがおこしているのか、家の中を風が吹き抜けていった。