ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

魔神の棲む山 2

ティーナは綺麗なお辞儀をし、

「お久しぶりです」

と言って微笑む。

「この前はありがとうございました」

シャトもそう言い、頭を下げた。

「今、シアンさんを家に案内する所だったんですが、まだ少し先なので、ここで会えてよかったです」

「突然訪ねて申し訳ありません」

同じ挨拶が繰り返され、三人はゆっくりと左右を森に囲まれた草地を歩き始める。

「この辺、魔獣に襲われたりとか、無いの? 村もどっちかといえばのんびりした感じだったし、さっき危なくないって言ってたでしょ?」

「そうですね、まったく、とゆう訳ではありませんが、殆どありません。西の山と北の山に棲む方々が、それだけの力を持っています。村は少し離れてはいますけれど…この辺りは精霊の力も強いので…」

「来る途中で、"魔神"が棲んでるって聞いたんだけど…本当にいるのか…」

シアンの言葉にシャトは『ふふっ』と、思わずこぼれたらしい笑みを、唇を噛んで抑え、どこか楽しげに言う。

「そうですね、強くて、優しくて、素敵な"魔神"が棲んでいますよ…」

シアンは首を傾げている。

「素敵な魔神ねぇ…その二つってくっつくもの?」

「…昔は、"良くないもの"って言われていたみたいですけど、ただ少し人間を遠ざけているだけです」

シアンとシャトの話を静かに聞いていた、カティーナが口を開いた。

「まじん、とか、せいれい、ってどんなものですか?」

シャトは何を答えたら良いのかが判らず、カティーナを見つめ、『えっと…?』と困った顔をする。

「あー、シャト、カティーナはノクイアケスの生まれじゃないんだ。言葉は困らない程度に扱えるけど、意味が分からなかったり、理解できない物があったりするから」

「別の世界から…? それで…鎖…」

そう呟くシャトを、今度はカティーナが不思議そうな顔をして見つめている。

「驚かないのですね」

「時々聞きますし、知り合いにも居ますから。…精霊の説明をするのなら、私よりシアンさんがした方が解りやすいでしょう」

シャトの言葉に、シアンは『ん"っ?』と声を漏らし顔を曇らせた。

魔力を扱う事の出来ないシャトよりは自分の方が適任だろう、と言われている事は理解しているが、解りやすく話す自信がないのか、腕を組んで、首を傾げ、しばらく黙る。

「あー、精霊ってゆうのは、いじられてない魔力の化身みたいな…大きく分けると6種類居るんだけど、なんてゆうんだ、魔力そのものが目に見える様になるんだよ。人の形してたり、動物の形してたり、ただ丸い塊だったり。人が使ってる魔力とは違うんだ、世界そのものの力。人でも魔獣でも、魔力に頼って余計な事すると、いや、そうじゃなくても必要以上に何か、魚でも木の実でも取りすぎるとか、荒らすとか、そうゆう事すると精霊の力が弱くなる。精霊の力が弱い場所は良くないものが集まりやすかったり…」

考えながらシアンは話しだしたが、段々と声が小さくなり、そこから続けて聞き取れない大きさでぶつぶつ独り言を言っている。

そして独りで頷き、カティーナに、

「まぁ、そんなとこだ」

とこれ以上は無理だとゆう顔を向ける。

ティーナはシャトに『正しいですか?』と聞き、シアンの顔を改めて眺めた。

シアンの説明を信用していないカティーナに、シャトは困った顔をする。

「間違いは、ない、と、思いますよ?」

シャトの答えにシアンは、どうだ! と言わんばかりにカティーナを見上げ、カティーナはその行動にまたため息をついた。