ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

魔神の棲む山 3

カティーナのため息の後で、シャトは魔神について話し始める。 「あくまで人が存在を区別するために使っている呼び名ですが、人の力では及ばない者、あるいは人でありながら何かを成した者の事を"神格者"もしくは単に"神"と呼んでいます。古い言葉を使うなら…

魔神の棲む山 2

カティーナは綺麗なお辞儀をし、 「お久しぶりです」 と言って微笑む。 「この前はありがとうございました」 シャトもそう言い、頭を下げた。 「今、シアンさんを家に案内する所だったんですが、まだ少し先なので、ここで会えてよかったです」 「突然訪ねて…

魔神の棲む山 1

周囲を山と森に囲まれた西の高地。 日差しは強いものの、時々吹く涼しい風に、夏の終わりを感じ始める頃だ。 9番目の月が間もなく終わる。 籠いっぱいの薬草を抱えたシャトが、楽しそうにじゃれ合う数頭の動物と共に歩いている。 「おーい! シャトー!!」…

その暦のこと

ノクイアケスには統一された暦が無い。 それぞれの大陸で、地域で、国で、それぞれに使われている暦が違うのだ。 ただ、それぞれに違う暦であっても、その多くは、伝承に沿った7つの日を1つの流れとする考えをもとに作られている。 光の日、魔力の日、大地の…

祈りの洞窟 19

分かれ道まで戻ると、魔獣はシャトにだけ伝えるつもりで言葉を紡ぐ。 『この先には、身勝手な人間に傷付けられた者、いわれなく虐げられた者、そうゆう者たちが多く居る。これからも人間を招きいれるつもりはないが、お前なら歓迎できるやもしれん。私は命尽…

祈りの洞窟 18

魔獣は立ち止まるとシャトに向かって語りだす。 『我々はそう数が多い訳でも、人のそばで暮らす訳でもない。種としての名などもってはいないし、個としても、名を持つのは稀なことだ。その中でもこれは珍しい一生をおくったらしいな…。人に心を寄せ、人の為…

祈りの洞窟 17

泉を挟んだ対岸には、岩の陰に隠れてはいたが、奥へと続く道がぽっかりと口を開いていた。 シャトは隣を歩くシアン達に、先を行く魔獣の事を話し始める。 「さっきあの方は、洞窟を荒らす人たちをこの先に通したくない、とおっしゃっていました。奥には人を…

祈りの洞窟 16

「知らない事は知らないでいいから、嘘つかないで正直に答えてくれる?」 明らかに年下のシアンからそう言われ、弓遣いは苦い顔をしながらも頷く。 「私達がここに居るって知ってたよな?」 「先に洞窟に潜っている奴がいるとは聞いた」 「それだけか?」 「…

祈りの洞窟 15

打ち出された火球を風で防ぐのは難しいと判断したのか、弓遣いはそれを避けようと飛び退く。 そして足が地面についた瞬間、左足の甲をシアンの放った矢が射抜いた。 呻きを漏らし、思わずよろめく弓遣いの右の太腿に次の矢が刺さる。 右の肩を狙った次の矢は…

祈りの洞窟 14

正面の三人の男のうち二人は剣を、一人は弓矢を構えている。 オーリスは真っ直ぐ男達に向かって勢いよく駆けていく。 リーダー格の男が左手を掲げ何かを呟くと、辺りに薄っすらともやがかかり、そのもやが凝集するかの様に空中に何本もの鋭く尖った氷塊が現…