ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

エマナク 1

日が落ちて既に一時間程立つが、四方から街道の集まる街の中はそこらじゅうで篝火が焚かれ、魔石で軒先を照らした店々からは呼び込みの声が響き、まだまだ行き交う人も多いその賑わいは街の外からでもよくわかる。

街にはその土地でとれる岩や土を材料にした赤い壁がずらっと並んでいるが、中央にそびえる塔だけは街の明かりに照らされ闇に浮かび上がる程に白く、昼夜を問わず人の目を引く。

近付いて見れば南方の物らしい紋様が刻まれたその塔、作りそのものは遥か北、マチルダやアーキヴァンの住んでいる国の物とよく似ていて、さらには四方を睨むように据えられた彫像のような物は海獣類の頭骨らしく、東の海から運ばれたのだろう事が想像される。

そのような大陸内の多地域の特徴を有するのはその塔だけではなく、店先の商品や食べ物、そして街を行き交う者達やその服装に至るまで各所に見受けられる。

 

「見えてきたな。あれが今日の目的地」

「ずいぶん明るいんですね」

その街、エマナクについて話しながら歩いていたシアン達だったが、闇夜に遠くからでも良く見える街の明かり、それから察することの出来る街の規模に少し驚いた様子のシャトに、シアンは『このあたりじゃ一番だからな』と応える。

「普段からいろんな種族が出入りしてるし、大きい奴、それこそ竜とか、そうゆうのを連れた商人とかも前来た時には居たな。だからオーリス達を連れて入っても問題は無いと思うけど、宿に泊まるか、その辺に幕張るか、それも含めてどうする?」

「イミハーテ達が街の中に入ることに乗り気ではないので、私は外で休みます。シアンさん達は仕事探しもあるのでしょうし、宿で休まれる様なら街に居る間は別行動に…」

「カティーナは?」

「仕事を探すのは明日ですか?」

「んー、とりあえず今日のうちに水鏡の掲示板と酒場を回っては来るけど、何か請けられるものがあったとしても動くのは明日だろうな」

「でしたら今日は私も外で休みます」

「じゃあ今日は揃って外な。とりあえず街の中回って来るから後で落ち合おう。南に向かう道が向こうにあるんだけど、道沿いに行くとすぐ林だからその辺で適当な場所探してくれるか? 他にも野営張ってる奴が居るだろうから、それは気をつけてな。あとは、あぁ…! ここ水場が外にないんだ、水筒分の水くらいは汲んでくるから、空いてるの全部貸して」

「お一人で?」

「夕食らしい夕食食べてないだろ? オーリス達も。シャトがそうゆうので動けるように留守番が居た方がいいだろうし。じゃあ、あとで…あ、ここ、あれあるぞ、適性みる魔石…今言ってもしょうがないけどな。うん、じゃ、またあとで」

シアンは二人から受けとった水筒を連ねながら一人でしゃべり、それを腰に下げると二人が何も言わないうちに背を向けて街に向かって歩き出す。

「目印がわりに見えるところでオーリスに待っていて貰いますから…」

「お気をつけて」

かけた声に振り向くことなく『あいよー』と答えて足早に離れていくシアンを見送った二人は、オーリス達と共に南向かう街道を目指して歩き出す。

歩きながら周囲を見渡すと、今来た道は別にして、他にもまだ街に向かっている者が居るらしく、いくつかの明かりが遠くで揺れていた。