ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

魔神の棲む山 12

次の朝、起き出したシアンは家の中に人の気配が無いことに気付き、身支度を整えると外にむかった。

「早いな」

戸口から出てすぐ、朝もやの中にカティーナの姿を見つけ、声をかける。

「おはようございます」

ティーナは一度振り向きそう言うが、すぐにもとの姿勢に戻る。

「一度聞きたかったんだけど、もやだの何だのの中にいるの好きなのか?」

ティーナは『そうゆう訳では…』と顔を伏せ、目を閉じた。

しかし、少し間を置いて再び、強い視線をもやの奥へと向ける。

もやの奥に、何かを見ているような、そんな視線だ。

一歩分後ろに立っているシアンから見えるのは後ろ姿だけで、その様子には気づいていない。

「シャトもクラーナさんも居ないのか?」

「朝の内にいろいろ収穫するんだそうです。もうずいぶん前に出られましたよ」

「そっか…。カティーナ…シャトの事、どう思う?」

「どう、とは?」

ティーナはシアンに、意図がわからないとゆう顔を向ける。

「一緒に行動できると思うか?」

 

シアンはそう問いかけながら、昨夜のクラーナとの話を思い返していた…。

 

ノックの音に応えると、開かれたドアの隙間にクラーナが顔を覗かせる。

「遅くにごめんなさいね、少しいいかしら?」

「ええ、構いません。どうぞ」

シアンはベッドにクラーナは椅子に座って向かい合う。

「私の服、少し大きかったわね?」

クラーナはシアンが着ている寝間着を眺めて困ったように笑い、少し間を置いてから改めて口を開く。

「洞窟でシャトと会った時、あの子がどんな感じだったか聞きたくて…」

「どんな感じ…。どんな感じ? えっと、こちらで話をした時とそんなに印象は変わらないように思いますけど…」

「そう…」

クラーナは遠くを見つめているようだった。

「何か、気になる事があるんですか?」

シアンは遠慮したほうがいいのか悩んだが、結局正面から尋ねる。

「シアンさんは獣遣いの事、どれくらい知っているの?」

「詳しくはないです。誰でも知っているような事だけ…何とでも話せて、契約で魔獣や何かのちからを借りて…正直、シャトさんや皆さんと会うまでは印象良くなかったです。街に居た獣遣いが排他的とゆうか、なんか、そんな感じだったので」

クラーナは眉を寄せ頭を下げた。

「ごめんなさいね」

「何でクラーナさんが謝るんですか…!」

シアンは慌て、思わず立ち上がりかける。

「獣遣いって、どうしても、そうゆうふうに思われやすいの。理由はいろいろあるけど、人の中で生きる為にはそうならざるを得ない部分もあるから…。でもシアンさんがシャトに悪い印象持っていないとゆうのは嬉しいわ」

クラーナはそう言うと笑顔を見せた。

 「会ったばかりでこんな話をするのはおかしいとは思うんだけどね、シャトがもし…もし、貴方達と一緒に旅をしてみたい、って言ったら、受け入れてくれる?」

シアンはどう答えたらいいものかと、判断できずに黙っている。

クラーナはその様子を見て、目を閉じ、ふっと息を吐いた。

「困らせるような事言ってごめんなさい。だめね、慣れないことはするものじゃないみたい…今の話は忘れてくれていいから」

シャトとよく似た困ったような笑顔を残し、クラーナは『ゆっくり休んでね』と部屋をあとにする。

シアンはクラーナが本当は何か別の事を言いたかったのではと、考えを巡らせるが答えは出ず、そうしているうちにいつの間にか眠りに落ちていた。