ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

エマナク 11

「…まぁ、そんな感じだから」

女については話したくないのか、かなりはしょった話ではあったが、シアンは続けて『出来れば関わりたくない相手だけど、目利きだけは確かだから』と言って、カティーナに顔を向ける。

「どうする? 手放せない物があるならもう一回交渉に…」

"行きたくねぇなぁ!"と口をついて出そうになった本音を飲み込んだシアンは『あーあ』と草の上に寝転び、カティーナはそんなシアンに答えを返せずにいる。

「どうなんだよ?」

「…そうですね…無くなったからと言って生きるに支障が出るものはありません…」

そうは言ったものの、カティーナ表情は明らかに曇っていて、シアンは『どうにかしたいならしたいって言えよ…』と呆れたように笑う。

探して回っても見付けることが出来ず、さらにシアンの話を聞いて、荷物がない、とゆう事に実感が湧いたのか、盗られてすぐと比べるとカティーナの纏う空気は少しだけ重くなっている。

「すみません、こちらの世界に来てから、特にシャトさんと知り合ってからいろいろな方から頂き物をしています。出来るなら手元に…」

「じゃーしゃーない。どうなるかわかんないけど、とりあえず行くだけ行くかぁ…! 丸ごとじゃないと売らないのはあの人の主義だからどうにもなんないけど、値引きになら応じるだろ…たぶん。ただ、そのかわりに、何かしろって言われる可能性が高いからそのつもりで…」

「あの、私も行って構いませんか?」

「…会って気持ちの良い相手じゃないぞ?」

黙って話を聞いていたシャトだったが、何かおもうところがあるのか、起き上がったシアンに尋ね返されてもこくんと頷き同行の意思を示す。

「オーリス達は連れていきませんが、もし今から街へ行くならもう少し街道から離れてもらいたいので一旦幕を片付けることにしても良いですか?」

「ん、分かった。…あ、カティーナ、幕だけは無事だったな。とりあえず寝るには困んないわ」

「そうですね…おとはお鍋と魔石が一組と、水筒…」

シアンは軽口のつもりだったのだろうが、カティーナは真面目に何が残っているだろうか、と考え、『売れるような物は残っていませんね…』とため息をついた。

「ご迷惑をおかけします」

「お互い様お互い様。気合い入れてけよ、敵はこっちのことなんかお構いなしで自分の欲に忠実な変態だ。何が起きても真っ正面から受け止めないこと」

「へんたい?」

「あぁ、いぃいぃ、とにかく何が起きてもそんなもんだって思って放っておくぐらいでいいから」

ティーナとシャトはしゃべりながら嫌そうな顔をするシアンを見て首を傾げていたが、『ほれさっさと!』とシアンに煽られて自分の幕を外しにかかった。