ノクイアケス

ノクイアケスとゆう世界を舞台にした空想小説。

雨の後 13

先に食事の用意をするとゆうウラルを一階に残し、二人が二階に上がるとカティーナが扉を開けて出迎えた。

相変わらずの裸足にシーツを纏った姿だったが、編み上げられた髪を見るにずいぶんと腕を動かせるようになったらしい。

腕に巻かれた包帯が替わっていることに気がついたシアンは、何が気になるのか『触ってもいいか?』とその包帯に軽く触れた。

「リファルナさんが下さったんだそうです。魔力を寄せるとか…。ただの布より安心感があります」

「へぇ、どうなってんだろ…」

指先で包帯をつまみ引っ張るシアンにカティーナは苦笑いし、手が離れたところでベッドへと戻っていく。

棚の上にはシャトが街の皆から預けられた果物や菓子が並び、その一つを手に取ったシアンは、

「ずいぶん物が増えたな」

とカティーナに向かってぽんと放った。

「街の皆さんからだそうです。お気遣いいただいて、あとでお礼に伺わなくてはと思っています」

しっかりとそれを受け微笑んだカティーナに、シャトが持ってきた篭を差し出した。

「着ていた服と靴は汚れが落ちないそうです。全く同じとはいきませんが、カティーナさんの服を元に皆さんが一揃い用意してくれました。靴はちょっと変わった形なので慣れないと履きにくいかも知れませんけれど…」

目を丸くするカティーナに、シャトは篭の中身をそっと手に取り、改めて差し出す。

「ローブと靴以外は替えもありますし、多少の汚れくらい構わないのですが…」

「皆さんの気持ちです。どうか受け取ってください」

「…ありがとうございます」

ティーナは遠慮したい気持ちもあるようだったが頷いて言い、受け取った服の上に乗っている靴らしい物を見てシャトに尋ねた。

「この靴はどうやって履くのでしょうか?」

爪先と踵の形はあるが、あとは布ばかりでおよそ靴には見えないそれにはシアンも首をひねっている。

シャトはローブを脱ぐとリュックの中から同じ形の靴を取り出す。

本人はゆっくりとやっているつもりなのだろうが、足を靴に添わせるとそこからは周りの布を折りたたみ、太い紐のようになっている部分でくるくると土踏まずからふくらはぎまでを巻くように包み先の始末をするまでが一連の動作として流れていく。

慣れているらしく、両足を履き終えるまでに大した時間はかからなかった。

「爪先と踵さえ合えば足の大きさは関係ありませんし、上まで巻く必要がなければ足首までの長さで紐を切ってしまっても大丈夫です」

シャトはそう言うが、履き終えた靴を見ながらカティーナは困っていた。

「もう一度お願いできますか?」

シャトは紐を解き、一度目よりも意識してゆっくりと動きながら、

「明日、長老様方が挨拶に来たいとの事ですが、構いませんか?」

と言い、カティーナが頷いたのを見ると続けて尋ねた。

「お二人はこれからどうされますか? 私は明日の午後街を出て一度南に戻るつもりなのですが」

シャトがそう言ったところでウラルが食事を持って部屋へと入って来た為に話は途切れ、シアンはウラルが運んできた二人分の食事に首を傾げた。

「二人とも食べていかないの?」

「すみません、私、父に呼ばれているんです。食事のあともう一度来ますから、その時にまた」

「私も一度家に戻るから、ゆっくり食べてて。またあとで来るわ」

「すみません、お手数おかけして」

「気にしないでいいのよ、こっちが勝手にやってるような物なんだから」

「失礼します」

「ああ、また」

シャトがローブを羽織ると二人は足早に部屋を後にし、残された二人は食事をしながら今後のことを話し始めた。